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手術併用矯正

手術併用の矯正治療が必要な患者様へ

受け口や顕著な出っ歯、ガミースマイル(歯ぐきの露出)、顔のゆがみといった骨格に起因する症状がある場合、歯列矯正のみでは十分な改善が難しいケースがあります。そのようなときには、外科手術を組み合わせた矯正治療をご案内しています。
この治療は見た目の変化を目的とする美容整形とは異なり、医療的な必要性に基づくものです。手術を伴う場合には、2〜3週間程度の入院が必要となり、治療全体の期間はおおよそ2年半ほどかかることが一般的です。
なお、「顎変形症」という診断がついた場合は、手術と矯正の両方に健康保険が適用されます。費用には個人差がありますが、3割負担で総額30万円前後となるケースが多く見られます。

手術併用矯正の流れ

STEP1基本検査

治療計画の立案に必要な資料を収集します。レントゲン、写真、歯型などをもとに、現在の状態を把握し、詳しい分析を行います。

STEP2精密検査

上下の顎のバランスや咬み合わせをより詳細に確認します。採取した歯型を咬合器に取り付けて、実際のかみ合わせの状態を立体的に評価します。

症例検討会

日本矯正歯科学会の認定医や臨床指導医が中心となり、院内で症例ごとの検討会を実施します。各分野の専門的な見解をもとに、最適な治療方針を導き出します。

STEP3診断

検査結果をもとに、治療の選択肢やリスク、費用面について丁寧にご説明いたします。診断にはコンピューターを活用し、模型上でのシミュレーション(セットアップモデル)もご確認いただけます。内容をご納得いただいた上で、治療をスタートします。

1.装置を装着してからの流れ

(1) セパレーション

奥歯に矯正用の装置を装着するスペースを確保するため、歯と歯の間に小さなゴムを入れて隙間を作ります。

(2) バンドフォーミング

奥歯に金属製のバンドを取り付けてワイヤーを通します。必要に応じて、TAD(一時的固定装置)と呼ばれるミニスクリューを併用することがあります。これは、前歯を後方に動かしたり奥歯の位置を調整したりするための固定源となります。

(3) インダイレクトボンディング

当院では、ブラケットの位置を模型上で正確に決めたうえで、専用のトレーを用いてお口の中に装着する「インダイレクトボンディング法(間接接着法)」を採用しています。使用するのは目立ちにくいセラミック製のブラケットです。

(4) ワイヤーセット

必要な歯の抜歯が完了した後、バンドやブラケットにワイヤーを通して装着します。これで矯正治療の本格的なスタートです。

2.術前矯正(1年半〜2年)・お口の掃除

治療初期は月1回の通院で、ワイヤーやゴムの調整・交換を行います。また、家庭での歯みがきでは取りきれない汚れを専用の機械で丁寧にクリーニングします。定期的に歯型を採取し、手術後の咬み合わせのシミュレーションも行います。

3.手術前スプリント装着

3.手術前スプリント装着

手術3ヶ月前から、顎の位置を安定させるための装置(スプリント)を装着していただきます。

4.術前検査

手術計画を立てるために、レントゲン撮影、口腔内および顔貌の写真撮影、歯型採取、顎の位置検査、CT撮影などを行い、資料を収集します。

5.手術

手術は大学病院にて、専門の口腔外科医が担当します。入院期間は通常2週間程度が目安です。

6.術後矯正(半年〜1年)

手術が終わっても噛み合わせはまだ不安定なため、細かい調整を行う術後の矯正治療を続けます。しっかりと噛める状態を目指して仕上げていきます。

7.装置除去

歯並びと咬み合わせが安定し、治療が完了したら矯正装置を取り外します。

8.保定装置装着

矯正治療後の歯並びを安定させるために、リテーナー(保定装置)を装着します。後戻りを防ぐために必要です。

8.保定装置装着
8.保定装置装着

顎変形症の治療を検討されている方へ

顔の左右差や顎の突出など、顎変形症による見た目の悩みを長年抱えている方は少なくありません。さらに、外科手術を伴う矯正治療と聞くと、難しそうだと感じて踏み出せない方もいらっしゃるでしょう。 しかし、経験豊富な矯正歯科医と口腔外科医が連携して治療を行うことで、見た目と噛み合わせの両面において、良好な結果が期待できます。
治療前にコンプレックスを抱えていた患者様が、治療後に自信を持って笑顔を見せてくださる姿は、私たちにとって何よりの喜びです。
当院では、患者様が安心して治療に臨めるよう、必要な情報を丁寧にご説明し、どんな小さな不安や疑問にも耳を傾ける姿勢を大切にしています。外科的矯正を検討されている方は、ぜひ一度ご相談ください。

顎変形症とは

顎変形症とは、顎の骨の位置や大きさに異常があり、噛み合わせや発音、顔のバランスに支障をきたす状態を指します。以下のような症状がある場合は、歯列矯正だけでは改善が難しく、外科手術を併用した治療が必要となります。

  • 顔が左右非対称(顔面非対称)
  • 下顎が大きく前に出ている(下顎前突)
  • 下顎が小さい(下顎後退)
  • 前歯がかみ合わない(骨格性開咬)
  • 上下左右に大きなずれがある(骨格性反対咬合)
  • 骨格そのもののアンバランスによる不正咬合(上顎前突、顎骨非対称など)

健康保険適用矯正治療の対象者

  • 外科手術を伴う顎変形症の治療
  • 唇顎口蓋裂の手術前後に必要な矯正治療
  • 国が指定する先天性疾患による咬合異常や咀嚼障害が認められた方

障害者自立支援指定医療機関(育成医療、更生医療)、顎口腔機能診断施設とは

通常、矯正歯科治療は保険が適用されない自由診療ですが、外科手術を併用する顎変形症や、特定の先天性疾患が原因となる不正咬合については、保険適用の対象となる場合があります。
当院は「障害者自立支援指定医療機関(育成医療・更生医療)」および「顎口腔機能診断施設」の認可を受けており、保険での矯正治療が可能です。手術は、連携している県内外の大学病院や歯科大学病院で行います。連携体制のもとでスムーズに治療を進めてまいります。