ワイヤー矯正

ワイヤー矯正は、歯の表面に装着したブラケットにワイヤーを通して歯を移動させていく矯正治療です。最も歴史のある矯正法であり、技術的に確立されているため、比較的治療期間が短く、安定した治療結果が得られることが特長です。
歯周病や歯の欠損があるなど、複雑な症例にも対応できるため、治療難度が高いケースで選ばれることも少なくありません。近年では、目立ちにくい白いワイヤーや透明のブラケットなど、審美性に配慮した装置も登場し、見た目が気になる方にも受け入れられています。
世界中で最も広く使用されている矯正方法であり、費用面でも比較的リーズナブルである点も魅力です。装置による口内炎や歯みがきのしづらさなどのデメリットはありますが、ほとんどの方が1週間程度で慣れていきます。装置が見えることを除けば、非常にバランスのとれた矯正方法といえるでしょう。
ワイヤーとマルチブラケット矯正のメリット
MERIT01.幅広い症例に対応できる
ブラケットには「スロット」と呼ばれる溝があり、ここにワイヤーを通して歯を動かしていきます。四角いワイヤーを固定することで、歯を3次元的にコントロールできる点が大きな特徴です。この仕組みにより、出っ歯・受け口・開咬・乱ぐい歯など、さまざまな歯並びに対応可能です。また、抜歯を伴う治療や、マウスピースでは難しい複雑な移動にも対応できます。
MERIT02.歯の状態に合わせてその場で調整できる
歯並びは日々変化しますが、ワイヤー矯正であれば、その変化に合わせて診察のたびに細かい調整が可能です。マウスピース矯正の場合、合わなくなった際には再度型取りが必要になることがありますが、ワイヤー矯正なら、その場で調整できる柔軟性があります。
MERIT03.24時間、歯の移動ができる
取り外しができない装置であるため、患者様の使用状況に左右されず、24時間歯の移動が継続されます。 また、近年では矯正用アンカースクリュー(TAD)との併用により、従来ヘッドギアや顎間ゴムに頼っていた奥歯のコントロールも、より確実かつ効果的に行えるようになりました。
歯はどのように動く? ワイヤー矯正の仕組み
ワイヤー矯正は、「ブラケット」と呼ばれる小さな装置を歯の表面に取り付け、そこにワイヤーを通して歯を計画的に動かしていく治療方法です。 各ブラケットには、歯を理想的な位置に導くための情報(角度・向き・高さなど)が組み込まれており、上下方向の移動や回転、ねじるような動きまで、細かくコントロールすることが可能です。
STEP1歯のガタガタを整列
治療の初期段階では、歯がデコボコしていることが多いため、細くて柔らかい「形状記憶合金製ワイヤー」を使用します。このワイヤーは曲げられてもゆっくりと元の形に戻ろうとする性質があり、その力を利用して歯を無理なく少しずつ動かします。 歯並びが整ってきたら、段階的に太くてしっかりしたワイヤーに交換し、さらなる調整を加えていきます。
STEP2隙間を閉じる
歯がまっすぐに並んできたら、より硬いワイヤーを使用して噛み合わせの精度を高めていきます。抜歯を行っている場合は、この段階で抜いたスペースを徐々に閉じていきます。
STEP3噛み合わせの調整
見た目の歯並びが整っただけでは、矯正治療は完了ではありません。最終段階では、上下の歯がしっかりと噛み合うように細かい調整を行います。見た目だけでなく、機能面でもしっかり噛める状態に仕上げていくのがこのステップです。 表側からの確認に加えて、スキャナーで裏側の噛み合わせもチェックし、最終的なバランスに問題がなければ、矯正装置を取り外します。
人に気づかれにくい舌側矯正(裏側矯正)

裏側矯正とは、一般的な表側矯正とは異なり、歯の裏側(舌側)に矯正装置を取り付けて歯を動かしていく治療法です。「リンガル矯正」とも呼ばれ、口を開けたときにも装置が見えにくいのが最大の特徴です。 人に気づかれずに治療を進めたい方や、接客業・芸能関係など職業上装置を見せたくない方に特に適しています。
舌側矯正は高度な技術を要するため、治療費や治療期間はやや増える傾向にありますが、周囲に知られずに矯正を受けられるという点で、多くの方に選ばれています。
メリット
- 装置が表から見えにくいため、目立たずに矯正ができる
- 表側矯正とほぼ同じように歯をコントロールできる
デメリット
- 装着直後は、発音しづらさを感じることがある
- 装置の位置が見えにくいため、歯みがきが難しくなる
ハーフリンガル

上下の歯すべてを裏側から矯正する「フルリンガル」も可能ですが、発音への影響や違和感を軽減したい場合には、上顎だけを裏側矯正、下顎は表側矯正で行う「ハーフリンガル矯正」という選択肢もあります。 下の歯はもともとあまり見えにくいため、目立ちにくさはそのままに、治療費もフルリンガルより抑えられるというメリットがあります。
なお、舌側矯正でもより正確な歯の移動を行うため、必要に応じてアンカースクリュー(矯正用の固定装置)の併用をご提案する場合があります。
部分矯正

全体のかみ合わせに大きな問題がなく、前歯のズレやすき間など、限られた範囲だけを整えたいという場合には、「部分矯正」が適していることがあります。 動かす歯の本数が少ないため、治療期間は短く、費用も抑えられるのが特長です。

